Minola M-Rokkor 40mm F2 修理記録

Minola M-Rokkor 40mm F2

今回お預かりいたしましたモデルは、そのマウント装着形状がバヨネット型のタイプになります。ドイツ語のBajonettからの由来で、元々は銃弾がなくなった際に、肉弾戦で戦う為の、小銃の先端の装着する銃剣の事を意味していました。ちょっと物騒ですよね。通常は、3から4枚の爪の様な羽とストッパー部位から構成されています。反対用語としては、スクリューマウントで、軽の大きさで、主にL39とM42の二種類があります。

個人的には、スクリュータイプのモデルを整備するのが好きなのですが、ねじ込み式のモデルの場合、レンズが完全にカメラにロックされないので、フォーカス調整機構螺旋状部が汚れてくると、そのトルク感が少しづつ重くなってしまいます。ある重さにまで汚れが溜まると、レンズ側でフォーカス調整ダイヤルを至近距離側に回転させる際、レンズがカメラ本体から外れてしまうという欠点がありました。

こういう経緯の元、光学機器の製造の歴史からいうと、スクリューマウントの後に、各カメラメーカーがこぞって、カメラにカチッと固定されるタイプのマウント形状のレンズを製造し始めました。今では、マウントアダプターという写真家の方にとってとても応用が効く中間機材が登場していますので、スクリュー型でもバヨネットタイプでも撮影が可能な時代になりました。

バヨネット

Minola M-Rokkor 40mm F2というモデルのマウント部は、その一部のリーチが斜めに切り取られた様な形状をしています。このタイプのモデルは、傾斜カム機種と呼ばれています。この金属部位の傾斜は、カメラ本体の距離計との連動の関係上、製造段階でレンズ側に切れ込みを入れました。当然ですが、このレンズは、レンジファインダー式フイルムカメラ時代の交換用レンズとして製造された機種の一種に属します。

レンズ検査ご依頼までの流れ(経緯)

レンズ修理ご依頼者様から頂いたお問合せメール

MINOLTA (ミノルタ) M-ROKKOR 40mm F2  のオールドレンズの中にあるカビをとってほしいです。他にもレンズのここをこうした方が良いなど、他にもなおせる範囲で提案があれば教えてほしいです。大体の納期や料金もわかればお願いします。

こちらからのお返事メール

カビ等光学系付着物除去処置に必要なレンズ鏡胴内部へのアクセスが順調に進めば課題が解決するケースはございます。整備費用に関しましては、過去の修理記録台帳を紐解きますと同機種にて概ね20,000円(税込)くらいかかっております。納期に関しましては、現在10日間くらいお時間を頂いております。いずれに致しましても、ご依頼者様の大切な光学機器です。業者さんの選定等々、十分にご検討下さい。
(一社)日本レンズ協会 代表理事 田斉健輔

今回お預かり致しました機種

Minolta M-Rokkor 40mm F2 付属品
Minola M-Rokkor 40mm F2 付属品
機種名Minola M-Rokkor 40mm F2
シリアルNO2115294
付属品フロントキャップ
課題(所有者さん見解)光学系付着物除去
ご希望予算特になし

整備報告

お電話にてお話し致しました内容と重複してしまいますが、レンズ鏡胴内部に組み込まれているすべての硝子部位表面に付着しておりましたカビ・埃等々、すべて除去処置施しました。カビ除去後の腐食痕跡も殆ど残らず、復元状態は上々と判断致します。カビの種類は主に点カビと雲状カビでした。

Minolta M-Rokkor 40mm F2 昆虫の死骸と各種カビ
Minolta M-Rokkor 40mm F2 昆虫の死骸と各種カビ

除去処置前の光束(こうそく)=70とすると、処置後はその指標数値が95くらいまで復元しておりますので、このモデル本来の持ち味が体験できる状態にはなったと感じております。ちなみに、この光束(こうそく)とは、レンズ対物側から入射した光源がどのくらいカメラ側の撮像素子に届くのか?という数値になります。

レンズの様な光学機器は、未使用期間が長期化しますと、駆動系・光学系共に随所に支障をきたしてしまいます。保管時のレンズの向きにもご留意頂きまして、今まで同様今後も大切にご所有下さい。尚、このモデルは金属・硝子部位共にとても上質な素材でできております。撮影の大切な友=道具としても、今後の資産と致しましても、市場での価値はどんどん見直され、上がっていきます。

絞り羽ユニット機構

このモデルの絞り羽ユニット機構は、とてもシンプルで、絞り羽調整ダイヤル以外他には伝達部位がありません。こういう構造のレンズこそ、後世に継承して頂きたいモデルの一種に属します。普及型廉価コピー機種とは一線を画した正真正銘の単焦点オールドレンズといっても決して過言ではありません。

Minolta M-Rokkor 40mm F2 開放時
Minolta M-Rokkor 40mm F2 開放時
Minolta M-Rokkor 40mm F2 絞り時
Minolta M-Rokkor 40mm F2 絞り時

昆虫とは何か?

レンズを何だかの光源にかざして目視した際に、光学的に何だかの支障を感じる場合、下記の様な幾つかの原因があります。

整備可能整備不可
硝子部位自体の痛み
カビコーテイング自体の痛み
コバ剥がれ合成レンズの張り合わせ面の白濁
昆虫の混入

今回お預かり致しましたレンズの場合は、付着物は主に埃とカビと昆虫でしたので、いずれも整備可能な原因ですので、処置が上手く進行しました。レンズ自体はとても機密性は高いのですが、どんな機種でも外部からの異物の侵入は避けられません。

Minolta M-Rokkor 40mm F2 昆虫が付着していた硝子部位
Minolta M-Rokkor 40mm F2 昆虫が付着していた硝子部位

昆虫がレンズ鏡胴内部に侵入するという現象は、少し不思議に感じると思うのですが、整備の世界に身をおいていますと、結構散見される事象になります。付着物がコバ剥がれの場合は、レンズを覗くと黒い物体が目視できます。昆虫の場合はほとんどのケースで茶色く目には映る事が多いです。

納品に関しまして

※お願い・・・銀行お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。確認後速やかに納品させて頂きます。

発送方法クロネコ着払い便
送り状NO別途メールにて報告
配送状況お荷物追跡システム

ご決済に関しまして

整備費20,000円(税込)
送料ご依頼者様ご負担でお願い致します
決済方法銀行振り込み
合計20,000円
お願いご決済後メールにてお知らせ下さい
お振込み先銀行

・みずほ銀行
・五香支店
・口座名義 一般社団法人 日本レンズ協会
・普通口座
・口座番号 1715154

山田 太郎の様にご記入下さい

納品後ご依頼者様から頂いたメール

お世話になっております。今日レンズ無事届き、早速撮影してみました。光束の差がすぐわかりました!こんなきれいにしていただきありがとうございました!大事なパートナーになりました。ありがとうございます!!また、何かあった時は相談に乗ってください。^_^

ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
(一社)日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔

kensuke tasai と申します。 光学機器の修理を主たる業務としております。 関連コンテンツも並行して配信させて頂いておりますので、リクエストございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。