Nikon AI Nikkor 105mm F1.8S 修理記録

Nikon AI Nikkor 105mm F1.8S

今回お預かり致しましたNikon AI Nikkor 105mm F1.8Sというレンズは、1981年にF1.8という、このクラスで最も大口径のレンズとして製造・販売されました。なので、オールド単焦点レンズとしては、比較的新しい部類の機種に属します。この時代は、ちょうど1年前にニコンF3というフイルムカメラが発売された時代でもあります。これ以降、カメラ・レンズ共にAF時代へと移行していく転換期ともいえる時代になります。

ニコン F3
ニコン F3

この様な過渡期の中、Nikon AI Nikkor 105mm F1.8Sというレンズは、AF化できず姿を消していくのですが、後継機種として、Ai AF DC NIKKOR 105mm F2Dが1993年9月に発売され、役目を終える事になります。販売年数は約12年でした。一種類の製品としては比較的ロングセラーレンズであったと言えます。

ニッコール105mm F1.8の変遷

第五十九夜 Ai NIKKOR 105mm F1.8S

修理の世界から見た特徴

Nikon AI Nikkor 105mm F1.8Sというレンズは、ガラス部位が最も構成枚数の少ないレンズでもあります。なので、修理の世界から見ると比較的に簡単な部類に入ります。もしも、ご自宅で整備しようと思った場合は、まずはその構造を理解しておく必要があります。

Nikon AI Nikkor 105mm F1.8S レンズ構成と特徴
Nikon AI Nikkor 105mm F1.8S レンズ構成と特徴

三つの部位から構成されています

レンズ鏡胴内部へのアクセスは、三つの大きな部位を順番に外していく手順になります。この際、とても小さなイモネジを外しますので、このネジを紛失しない様に工夫します。

Nikon AI Nikkor 105mm F1.8S 順番に検査
Nikon AI Nikkor 105mm F1.8S 順番に検査

各部位構造

Aという部位には主にフォーカス調整機構が組み込まれています。絞り羽調整ダイヤルも組み込まれていますが、絞り羽ユニット機構そのものは、Bの機構に組み込まれている構造になっています。Cという部位は、AとBを固定する連結部位カバーの役割を担っています。

こういう構造になっていますので、カビの様な光学系付着物除去をしたいのであれば、写真の様な状態から、Bの部位を処置していきます。フォーカス調整機構のトルク感に問題がある場合は、Aの部位を処置していく事になります。

今回の修理ご依頼内容は、カビの除去とフォーカス調整機構が固く固着している症状の復元でしたので、上記写真の内、AとBの部位を主に処置致しました。

レンズ検査ご依頼までの流れ(経緯)

今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。

ご依頼者様から頂いたお問い合わせメール

いつもお世話になります。今回は中望遠単焦点レンズの修理をお願い致します。カビだらけなのと、ピントリングが全く動きません。なので、ピンとを合わす事ができません。この様な症状は修理可能でしょうか?先のお電話にて、調整ダイヤルは無理に回さない様にとの事でしたので、それからはいじっておりません。今回も修理の範疇で出来うる処置で充分ですので、何とか実写できる様にお願い致します、レンズはNikon AI Nikkor 105mm F1.8Sという機種になります。

今回お預かり致しました機種

Nikon AI Nikkor 105mm F1.8S 付属品
Nikon AI Nikkor 105mm F1.8S 付属品
機種名Nikon AI Nikkor 105mm F1.8S
シリアルNO187866
付属品前後キャップ、フイルター
課題(所有者さん見解)絞り羽根とカビ
ご希望予算25,000円くらい

整備報告

先ずは、駆動系部位に関してですが、フォーカス調整機構螺旋状部及び駆動伝達部位の汚れを除去しましたので、その動きは復元しております。関連螺旋状部一部に歪みがありますので、その箇所を通過する際、若干ですが、そのトルク感にムラを感じると思います。次に光学系付着物に関してですが、レンズ鏡胴内部に組み込まれている全てのガラス部位表面に付着していた埃・カビ全て除去しましたので、レンズ全体としての光学的なクリアー度は復元しております。スカッと抜ける様な眩しいレンズに蘇りました。

除去前カビの写真一例

Nikon AI Nikkor 105mm F1.8S 菌糸状カビ
Nikon AI Nikkor 105mm F1.8S 菌糸状カビ

今回の処置で、今後もしばらく撮影の友として使用できる状態に復元しておりますので、今まで同様大切にご所有下さい。尚、ご自身で整備される場合は、別途お伝え致しました、解説動画を参考にして頂きまして、小さな部位を紛失しない様に工夫しながら慎重に対処お願い申し上げます。未使用期間が長期化しない様にまめに使ってあげて下さい。

納品に関しまして

※お願い・・・銀行お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。確認後速やかに納品させて頂きます。

発送方法クロネコ発払い便
送り状NO別途メールにて報告
配送状況お荷物追跡システム

ご決済に関しまして

整備費25,000円(税込)
クロネコさん送料神奈川県(一律)=930円(税込)
決済方法銀行振り込み
合計25,930円
お願いご決済後メールにてお知らせ下さい
お振込み先銀行

・みずほ銀行
・五香支店
・口座名義 一般社団法人 日本レンズ協会
・普通口座
・口座番号 1715154

山田 太郎の様にご記入下さい

ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
(一社)日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔

kensuke tasai と申します。 光学機器の修理を主たる業務としております。 関連コンテンツも並行して配信させて頂いておりますので、リクエストございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。