Lマウント規格のTopcor標準レンズは、Leotaxフイルムカメラ用交換レンズとして、確か10機種くらいのラインナップがあった様に記憶しております。今回お預かり致しました機種は、その中でも Leotax F時代の後期に登場した、5cm F2レンズの最初期のものになります。前玉硝子部位を押さえる銘柄プレートリングの字体も、いかにも昭和時代を彷彿させてくれます。尚、この初期モデルはとても短期間しか生産されなかった経緯があり、製造本数自体も少ない希少なモデルと位置付けられています。
懇意にしている写真家の方に聞くと、現在ではカメラ本体の評価はそれ程高くはなく、レンズのTopcorだけが高価格にて取り引きされている様で、実写に際してはどのモデルも非常に優れているとの事。中でも、特にF2のモデルは秀逸で、現在同様昔から高く評価されていた機種になります。修理の分野からこのモデルを分析しますと、レンズ鏡胴後郡に意図的に隙間を設けていて=空気レンズともいわれていますが、この部位の処置には注意を要します。
レンズ検査ご依頼までの流れ(経緯)
今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。
ご依頼者様から頂いたメール
初めまして、レンズの整備をお願いしたくメッセージを送らせていただきます。Tokyo Kogaku Topcor 5cm F2の中玉・後玉のカビ等付着物と絞り羽の油滲みの除去の2点です。これからもメインで使いたいレンズなのでプロに一度整備していただければと思います、よろしくお願いします。
こちらからのお返事メール
1、カビ等光学系付着物に関しまして
レンズ鏡胴内部へのアクセスが順調に進めば、カビ等光学系付着物は可能と推測致します。
2、絞り羽フイルム本体に付着した油に関しまして
フォーカス調整機構螺旋状部グリスがレンズ鏡胴内部内壁を伝わって汚れを巻き込んで、絞り羽ユニット機構に流れ落ちてしまう傾向の個体が散見されます。こういう症状の個体は、汚れの除去処置を施しても、同じ様な症状が再発してしまいます。なので、今のタイミングでお金をかけて該当部位の油染みを除去する事はお勧めしません。考え方も色々あるとは思いますが現状、その油染みが見た目気になるとは思いますが実写に際して操作上、支障が大きくない様でしたら絞り羽フイルムが、絞り羽ユニットBOXに完全に収納され開放状態で固着してしまってから復元処置を施す事を、当協会ではお勧めしております。
ゆっくりとですが、カビは増えていくケースもありますのでカビの除去処置は、気づいたタイミングで整備に出す事を推奨致します。こちらからのお返事が、所有者様の情報入手の一環としてお役にたてれば、幸いでございます。いずれに致しましても所有者様の大切な光学機器です。業者さんの選定等々、充分にご検討下さい。
ご依頼者様から頂いたお返事メール
早速のお返事ありがとうございます。絞りの油滲みについては現在のところ動作に問題はなく自動絞りでもないのでお言葉通り様子見とさせて頂きたいと思います。カビ取りについてはホームページを拝見させていただき、納得できる技術と値段だとお見受けしました。2万円前後でカビ等付着物の除去をお願いできますでしょうか。
こちらからのお返事メール
おはようございます。
深夜から早朝にかけて静かな環境で仕事をする習慣上こんな時間帯にお返事差し上げる事どうかお許し下さい。先に送信しました、私の拙い(つたない)お返事お読み頂きまして恐縮でございます。光学系付着物の除去は、放置しておかない方がいいと思います。当協会で宜しければ、所有者様のご都合の宜しい時に該当個体、こちらまでご送付下さい。お手数おかけ致しますが、宜しくお願い申し上げます。所有者様のご希望予算内で結構でございます。正確なお見積もりは、レンズを初見後レンズの診断結果と共に、具体的な処置に進む前にお電話にてお伝えさせて頂きます。その節は宜しくお願い申し上げます。
今回お預かり致しました機種
機種名 | Tokyo Kogaku Topcor 5cm F2 |
シリアルNO | 14856 |
付属品 | 前後キャップ |
課題(所有者さん見解) | 光学系付着物除去 |
ご希望予算 | 20,000円(税込)前後 |
検査結果
硝子部位特に目立つ付着物状態は、下記写真の様な症状でした。
前後硝子部位表面に無数の擦れ傷が確認できます。又、中玉空気レンズ表面にも微細な擦れ傷が確認されます。通常中玉に傷が付く事は、理論上も稀なケースになります。レンズ鏡胴内部に組み込まれた硝子部位表面のカビ等光学系付着物を除去すれば、レンズ全体としての光学的なクリアー度は復元すると思いますが、カビ自体が腐蝕カビに成長している場合、除去後の腐蝕痕が残るケースが多いです。又、レンズが綺麗に復元すると、元々あった擦れ傷が目立つ様になります。又、こちらでの検査時、カビ等付着物は確認できましたが、その状態がそんなには悪くはない状態でしたので、処置前と処置後の状態を比較した際、目視的にはあまり大幅な改善は感じられないかもしれません。
整備報告
レンズ鏡胴内部に組み込まれている全ての硝子部位表面に付着していた埃・カビ全て除去処置施しました。レンズ全体としての光学的なクリアー度は復元しております。付着していたカビの種類は主に点カビと雲状カビでした。カビそのものは全て除去できておりますが、雲状カビ除去後の腐蝕痕が若干ですが、硝子部位外周に残ります。
この腐蝕痕は、実写には影響はないとは思いますが、この点ご了承お願い致します。又、レンズが綺麗に復元した分、前後硝子部位表面の無数の擦れ傷は目立ちます。又、空気レンズの硝子部位表面一部に傷があります。通常はこの部位に傷が付く事はあり得ないのですが、この様な症状も併せてご了承下さい。絞り羽フイルム本体に付着している油染みに関してですが、この機種はこの部位に限らず、とても高品質な素材を随所に使っております。
絞り羽フイルム本体も現代のチープなプラ素材ではなくて、しっかりとした素材でできております。なので、見た目的に気になるかもしれませんが、少しウエットな現状の方が、この機構にはベターですので、今後も安心してご所有下さい。外観・駆動系・光学系全てにおいてとても状態の良いレンズです。今まで同様大切にご所有下さい。
納品に関しまして
今回は初めてのお付き合いになりますので、ほんのお気持ちですが、こちらからの送料は当協会で負担させて頂きます。
※お願い・・・レンズ到着致しましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。こちらも安心しますので・・・
発送方法 | クロネココレクト払い便 |
到着希望日時 | 平日の夜間帯 |
送り状NO | 別途メールにて報告 |
配送状況 | お荷物追跡システム |
ご決済に関しまして
整備費 | 18,000円(税込) |
クロネコさん送料 | 片道づつ相互負担 |
決済方法 | 代引き |
コレクト手数料 | 440円 |
合計 | 18,440円 |
※以下、銀行振り込みのケースになります。
お振込み先銀行
・みずほ銀行
・五香支店
・口座名義 一般社団法人 日本レンズ協会
・普通口座
・口座番号 1715154
納品後ご依頼者様から頂いたメール
レンズ到着との事、良かったです。わざわざ、ご連絡ありがとうございます。とても希少なレンズです。全ての部位が上質な素材でできています。所有者様の撮影の良き友としてこれからもズーッと大切にご所有下さい。
ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
(一社)日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔